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■ 「物忘れと認知症」
伊与田 勲
 年をとると誰でもだんだん物忘れをしやすくなってきます。人や物の名前がすぐに思い出せなくて年のせいだとあきらめていませんか。例えば、「朝ごはんに何を食べましたか?」と尋ねられて、「ご飯と味噌汁とあと何だったっけ?」はいわゆる「ど忘れ」に相当します。多くの方の物忘れはこの体験の一部だけを忘れる良性健忘といわれるものです。しかし、「ご飯なんか食べてない」は、明らかに食べた行為そのものの記憶がなく認知症の初期症状が疑われます。記憶の過程は記名(覚える)→保持(覚えこむ)→想起(思い出す)の三要素からなり、認知症では第1段階の記名の過程に問題があり新しいことを覚えられなくなります。さらに、物忘れがどんどん進行していくのも認知症の特徴です。「ど忘れ」では想起の過程に問題があるといえます。では、私たちの脳の中では一体どんな変化が起こっているのでしょうか。外部からの情報は、まず大脳皮質に入りその後、側頭葉の海馬に送られます。海馬で整理された情報は必要なものだけ大脳皮質に送り出されて記憶として保持されます。記憶の時間軸の中で直前や短期の記憶に深く関係する部位はこの海馬といわれています。アルツハイマー病による認知症ではそこを中心に萎縮が進み年齢とともに脳全体に広がっていきます。顕微鏡で見ると脳の中ではしみのような老人斑や神経原線維変化といわれる変化がおきて神経細胞の脱落が見られます。認知症が発症する20年も前から老人斑の沈着が始まるといわれています。その程度や広がりには個人差があるものと考えられます。
 認知症の症状はいろいろな原因で起こりますが、一般的にアルツハイマー病が約50%を占め、脳血管性が約30%その他の原因が約20%とされています。今後、高齢化社会を向かえ認知症に対する取り組みがますます重要になってくると考えられます。中でも一番大切なことは、認知症に対する理解を深め、早期に発見し治療やケアを受けることです。早期なら症状の改善や生活の質を維持し進行を抑えることが期待できます。どうも物忘れがひどくなった、時間や日付が不確かになってきた、置き忘れが目立つようになった、同じ話を何度もするなど以前と違う日常の変化があれば、ご自分でまたは周囲の方が早期に気づいてかかりつけの医療機関を受診し相談されるのがよいでしょう。
(ミニミニおとくに平成18年6月1日より)

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