院名
診療科
町名
院長名
(社)乙訓医師会事務局
京都府長岡京市
今里北ノ町39−4
TEL:075-953-3914 otokuni.med@arrow.ocn.ne.jp
・京都府庁
・日本医師会
・京都府医師会
・乙訓保健所
・乙訓消防組合消防本部
・向日市
・長岡京市
・大山崎町
健康アドバイス
ホーム > 健康アドバイス > 「この春の出来事」
■  この春の出来事
土井 正樹
 Kさんが私の診療所に来られたのは昨年の冬のことでした。胃癌で胃を全部取られましたが、すでに癌がお腹の中に散らばっており、「何時、体調が悪くなるか分からないので、近くに主治医を確保しておくように。」と言われ、病院の先生からの紹介状を持って当診療所に来られました。Kさんは1人暮らしで身寄りが全くありません。年金だけで何とか生活をされていました。今年の冬には腹痛が強くなり、モルヒネ製剤を使うことになりました。入院を勧めましたが、経済的にできないと断られ、何とかその日その日をしのいで来られました。3月に入ると診療所には来られなくなり、同じアパートの人が見かねて市役所に連絡され、主治医の当方に知らせがありました。往診をしますと、ガリガリに痩せて立つことすらできなくなっていました。それでもヘルパーが入り食事を用意すると何とか食べることはできたため、本人の意思に従い、訪問介護、訪問診療で在宅生活を見守りました。Kさんは最後の力をふりしぼり、自らに意思に従い独居生活を続けられました。4月も終りに近づいたある日、薬を届けに行かれた薬局の方から通報があり、行って見ますともうすでに意識はなく、かけつけた看護師、ケアマネージャー、支援センターの方が見守られる中、間もなく穏やかに息を引き取られました。
 ケアマネージャーと看護師が体を整え、皆で合掌をしていますと、支援センターのSさんが、綴ってこられた本人の日記を見て涙ぐんでおられました。体調が悪くても、亡きお母さんの祭壇は埃ひとつないように綺麗にされており、日記には好きだった絵を描くことができない無念さ、自分の精進のなさから病気になったことなどが書かれてあり、純粋に生きて命を全うしようとされていた様子が分かりました。  未だに医療には限界があり、介護においても家族の手、経済力がなくてはどうしようもありません。奇しくも、この春に、介護保険、医療保険の同時改正が行われましたが、この方にとりましてなにか福音がありましたでしょうか。一人暮らし、老人だけの世帯など地域のあちこちで、救いの手を求める人たちの声は確実にふえつつあります。
(ミニミニおとくに平成18年7月1日より)

Copyright(C)1998 Kyoto Otokuni Medical Association.