医療の高度・専門化や住民の高齢化が医師や看護師の仕事量を増大させています

医師不足の全ての責任が2004年度に導入された「臨床研修制度」にあるかのような指摘もありますが、医師不足は構造的なものであり、新制度はその引き金となったに過ぎません。

日本における医師不足を考えるうえで外せないポイントとなっているのが、医療の高度・専門化、住民の高齢化の2つです。日進月歩の現代医療では、従来は原因不明とされてきた疾患のメカニズムが解明され、それに対する診断・治療、術式、薬剤などもどんどん新しくなっています。

また内科でも、循環器内科、消化器内科、呼吸器内科、神経内科、内分泌代謝内科などその専門によって細分化が進んでおり、専門の医師や看護師が治療を行い、状況に応じてCTやMRIなどの画像を診断する放射線科の医師、リハビリ科の医師などがチームとして患者の診療に取り組みます。

医療機器の進歩により、手術に要する技術も複雑・多様化しています。例えば大学病院等で導入が進んでいるハイブリッド手術室が注目されています。これは血管造影撮影やMRIなどの画像診断装置を従来の手術機能に組み込んだ最新鋭のオペ室です。ハイブリット手術室の登場により、心臓疾患の治療では、外科手術で最小限に切開した後、患者の心身の負担が少ないカテーテル治療を行えるようになりました。心臓血管外科、循環器内科の医師、手術室看護師、放射線技師はより専門的な知識と技術を求められます。

それぞれの専門分野に特化した医師がチームでかかわることにより、質の高い医療を提供することが可能となったことは喜ばしいことですが、それだけ多くの医師や看護師が必要となり、またその仕事量も増えることになるのです。

医師や看護師の仕事を増大させるもう一つの要因が住民の高齢化です。高齢者が増加するに比例して、心疾患・脳卒中・がんなどに罹り、継続的な治療が必要な患者も年々増大しています。近年は患者を直接診療するだけでなく、インフォームドコンセント等の書類関係の仕事量も増えており、医師の負担に拍車をかけています。

また医師国家試験合格者に女性が占める割合が大きく増えていることも医師不足に関係しています。女性医師は出産や育児の関係上、一定期間、医療現場から離れざるを得なかったり、短時間勤務は可能でも他の常勤医のようにフルタイムで働くことは困難となるケースが多くあります。

ワークシェアリング制度や院内保育施設の新設・拡充など女性医師が育児を死ながら働ける環境を整えている病院はまだまだ少なく、ブランクのある女性医師の復職職支援などをどう普及させていくかも今後の課題となるでしょう。

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