黒字率の低い病院の経営を立て直すため、民間資本・ノウハウの注入や病院間の統合がカギ

民主党への政権交代の時期を除き、診療報酬の引き下げ傾向が続いています。病院は医業収入の大幅な増加を望めないため、全国的に経営が厳しくなっていますが、なかでも厳しいのが自治体病院に代表される公的病院です。

厚生労働省は毎年、病院の経営状況に関する調査を実施しています。医療法人(私的病院)の数字を見ると、一般病院、ケアミックス(一般病床と療養病床を併せ持つ)、療養型を問わずどの分類でも8割以上の黒字経営となっています。

それに対し、経常利益が黒字になっている率が一番低かったのは、自治体のケアミックス病院で45%となっています。自治体病院は一般会計からの繰越金があるため、この分を差し引いた医業利益で見てみると、全自治体病院の黒字率は16.5%と非常に低い数字になっています。

毎年のように赤字を出している病院と、グループ傘下に多くの黒字経営病院を抱えている大手医療法人では何が違うのでしょうか?最も大きな差は固定資産回転率と人件費にあります。

「固定資産回転率」とは、固定資産と売上高の比率で、固定資産を利益につなげているか、それとも無駄なのかを判断する指標のことです。自治体病院の固定資産回転率は医療法人の病院の約半分に過ぎず、建物への投資が十分に回収されていないことがわかります。

次に「人件費」ですが、自治体の病院は医療法人に比べて医師や看護師の給与が低くく、病院の事務職員が高いという傾向にあります。これは自治体病院尾の職員の給与が年功序列の公務員の水準にしていることと考えられます。

自治体病院の赤字は、市町村の予算の中から補助金という形で度々補填されてきましたが、補助金を出す自治体の財政状況が年々厳しくなる中、運営方式を根本的に見直したり、他の病院と統合をするなどの動きが出てきました。民間の資金や経営能力などを活用し、民間主導で公共サービスを提供をする手法(PFI)が注目されています。

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