平均の入院日数を縮減しても、新たな患者で病室を埋められない病院が増加

医療の高度・専門化はそれに対応するために、相応の医師・看護師数と医療機器、仕事量が必要となりますが、それが可能なのは経営に余裕のある一部の病院に限られます。

高度・専門家に対応した病院は効率的な人材と医療機器の活用によって、患者の入院日数を短くし、大量の患者を病床の早い回転数で受け入れます。これは同じ病床の利用率では、平均入院日数が20日で600床の病院と、10日300床は延べ患者数は変わりませんが、後者の重要な収益源である手術が多いため、平均入院数は短いほうが、収益性が高いことになります。

日本の急性期病院における平均入院数を欧米と比較してみると長い状況にあります。日本は19日なのに対し、アメリカは5.5日、イギリスは7.2日、フランスは5.8日、ドイツは7.8日と2〜3倍の差があります。

本当に入院による治療が必要な患者がほとんとであれば、悪い話ではありませんが、実際は介護施設や在宅介護サービスの環境が整っていないため、必要以上に入院を余儀なくされる高齢者が多いケースが少なくなく、その結果、医師の負担も大きくなるのです。

世界的な医療の水準に達するために、国は医師、看護師を数多く配置し、平均入院日数の短い医療機関の診療報酬を手厚くする政策を推進しています。平均入院日数が短縮された病院は病床の回転が速くなり、ベッドに空きが生まれます。高度・専門家に対応できる大型病院は、空いた病床を新たな患者で直ぐに埋めることができるため、収益は安定します。

しかし、多くの病院では、空いた病室を新たな患者で埋めることができず、介護施設の不足等により受け入れ先の見つからない高齢者を受け入れて、病床を埋めているのが実情です。このような入院は社会的入院と呼ばれていますが、社会的入院の診療報酬は低いため、病院の収益は悪化してしまうのです。

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