【総論・感染経路・症状】
麻疹は麻疹ウイルス(Paramyxoviurus 科Morbillivirusu属)によって引き起こされる感染症で、
空気感染・飛沫感染・接触感染と様々な感染経路を示します。
感染力は非常に強く典型的な感染の場合、感染後10日間前後の潜伏期の後、
3日間続く
カタル期とその後の
発疹期に至ります。
(カタル期と発疹期の間に一時解熱するため、
二峰性発熱といわれる)カタル期には非特異的な感冒用症状(咳・くしゃみ・鼻水など)や結膜の充血、
眼脂等の結膜炎症状が主で、高熱も伴います。
カタル期の2−3日目に出現する
コプリック斑が早期診断の決め手となります。
見慣れていなければ見逃すことがあるので要注意です。
感染力はカタル期が最も強いのですが、
症状出現1日前頃より他者への感染があるといわれ、
発疹期になって症状が本格化するまでの間に自覚することができず感染を拡大させてしまうのです。
カタル期・発疹期を合わせると1週間以上の高熱が続き入院率や肺炎・脳炎・中耳炎などの合併症発生率がいまだに高い疾患です。
年間発生件数は約20万例、
死亡は10数例、1000−3000例に1例脳炎合併症を起こします。
また、感染後も数年を経て、
異常行動・性格変化・知能低下で始まる亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は麻疹ウイルスの脳内持続性感染で発症する予後不良な疾患として知られています。
特異的治療法はなく対症療法が中心ですが、
中耳炎・肺炎の細菌感染の合併症が多く死亡することもある危険なウイルス性疾患です。
【流行の傾向】
我が国では通常春から夏にかけて流行します。
1984 年に大きな全国流行があり、
1991年にも流行がありましたがやや小さく、
その後大きな全国流行はありませんでした。
しかし、毎年地域的な流行が反復していて、
感染症発生動向調査では、
国内約3,000の小児科定点から年間1〜3万例の報告があり、
実際にはこの10倍以上の患者が発生していると考えられます。
この中で2歳以下の罹患が約50%を占めており、
罹患者の95%以上が予防接種未接種でした。
近年の推移を見ると、
小児科定点から報告された麻疹患者数は、
1999 (平成11)年には過去最低となっていましたが、
2001(平成13)年は過去10 年間では1993 (平成5)年に次いで二番目に大きい流行でした。
2001年は当初より高知県、奈良県、九州地方などで流行がみられ、
3月に入って北海道でも患者数が急増しています。
近年の麻疹流行の特徴は、流行の多い県と少ない県が隣り合っていることです。
平成11 年度から、全国約500 の基幹病院定点より成人麻疹(18歳以上)の患者発生が報告されていますが、
2001年は過去3年間で最も多い報告数となっており、
これらの症例の多くは入院を要するような比較的重症例であると考えられます。
【予防接種】
麻疹の予防接種は日本では不活化ワクチンが昭和41年1966年から開始になりましたが、
異型麻疹、Take率低下などのために、同年高度弱毒生ワクチンのみの任意接種が始まっています。
その後昭和53年1978年から、同ワクチンの定期接種が始まりました。
1回0.5mlの接種で95%以上の有効率で免疫が成立するといわれています。
発症予防には麻疹ワクチンが有効ですが、
感染症流行予測調査によると国内での麻疹ワクチン接種率は低く、
1歳児の接種率は約50%であり、
2000 年度同調査から感受性人口を推計すると、
日本全国で300 万人弱の感受性者が存在していると考えられます。
欧米を中心に麻疹ワクチンの2回接種が実地されており、わが国でも開始されたばかりです。
米国でも2−3年ごとの流行を繰り返した後に大きな流行が発生し、
その後から1歳時と就学前の2回接種方法へと変更され、
以降の発生は非常に少なくなっています。
【抗体保有率】
麻疹の抗体測定方法は1996年まではHI法、
それ以降はPA法で行われ、PA抗体保有率(1:16以上)は0歳で21.4%1歳で69.5%、
その後急激に上昇し概ね95%以上を維持しているが、
1:256以上の抗体保有率は2−3歳まで急激に上昇し、
その後10代前半にかけて減少し、
その後緩やかに上昇した。
しかし、10−60代に至るまですべての年齢層に抗体陰性者が存在しています。
既感染の抗体検査ではPA法が推奨されていますが、
抗体があっても感染を起こすなど、
基準値には様々な異論があります。
【現在の状況】
2007年19週目に全国3000か所の小児科定点から報告された麻疹発生は214例(前週88例)で、
南関東地区の報告増加に伴い、遠隔地へも感染は波及し0−4歳では39.7%と例年と比べ低く、
10−14歳が33.9%と例年より高くなっています。
成人の報告は第19週で53例(前週25例)大幅に増加しています。
大阪でも発生したため、急きょ麻疹ワクチン希望者が急増したため、
麻疹単独ワクチンはほぼ入手困難で、次回秋までは入手不可能な現状です。
そこで、MRワクチンを接種することで代替えする方法がとられるため、
急に増加した接種者に押された形で、
定期予定接種のMR1期・2期の接種液確保も困難になりつつあります。
医療機関へのMRワクチンは定期注文量以上は配給制のような形で給付制限がかかっています。
早急にワクチンの確保・ないし接種可能期間の延長など検討してゆく必要性があります。
5月中旬で、現在検査キットも不足しはじめていて、検査も不可能に近くなっています。
よこばやし医院 横林文子