進む集約化で、地域ごとの救急医療体制の確立が急務に

医師不足に医療機関の経営問題が絡んで、危機的な状況があちこちで現われているのは産科、小児科、救急といった分野です。外科、内科でも、その兆しがうかがえます。

お産を扱う医療施設は、1996年に病院・診療所を合わせて3991施設あったのが、2008年には2567施設となり、36%も減少しました(分娩施設は10%減)。

小児科の診療を扱う病院の数は、同じ期間に24%減、診療所も17%減です。ただし、小児科の医師数は、病院・診療所ともに10%増となっています。

救急施設はどうでしょうか。3次救急の救命救急センターは1996年に131ヶ所だったのが、2008年には214ヶ所に増えましたが、2次救急(入院)に対応できる病院は26%も減っています。

本格的な手術(全身麻酔)を行なう病院の数も、同じ12年間に16%減少しました。ところが手術件数は46%も増加しており、実施施設あたりの月間手術件数は、29.5件から51.21件と大幅に増加しました。

共通して見えてくる傾向は、医療施設の「集約化」です。病院の場合、勤務医が辞めると、残った医師の当直回数やオンコールが増えて勤務が厳しくなります。その悪循環によって診療科が閉鎖されると、その科の医師は他の施設へ移ります。

しかし、分散しているより、まとまったほうが互いに協力できるので、診療レベルや勤務体系を維持しやすいのは確かです。結果として進んだ集約化だけでなく、隣接した市の市立病院同士が、参加と婦人科の分担を決めた例もあります。

手術や治療の件数ランキングが普及し、実施数の多い施設へ患者が集まる傾向も影響しているようです。手術は数を多くこなすほうが、医師の技量が上がる傾向があるからです。そういう意味では、出産や入院、手術の際に、少し距離のある医療施設を利用することになるのは、やむをえないと覚悟が必要かもしれません。

とはいえ、困った事態も起きています。一つは、それなりの広さがある地域から、産科や小児科などの施設が消えてしまうケース。もう一つは、救急への対応です。救急搬送は、遠方でもいいというわけにはいきません。

救急患者の受け入れが困難な例も相次いでいます。消防白書によると、2009年の救急搬送で6ヵ所以上の医療機関に照会したケースが、重症以上で4284件、小児で2525件、周産期で144件、救命救急センターヘ運んだ事案で5215件(各件数は重複あり)を数えました。

地域ごとの救急医療体制の確立を、特に重視する必要があります。患者側も、急を要する病状でないのに自分の都合で時間外や休日の救急外来にかかる「コンビニ受診」や、安易な救急車の利用など、医療者の負担を増やす行為をやめることが求められます。

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